この夏、新しくできた名古屋IGアリーナへ大相撲観戦に出かけた。充実した館内にも驚き、下剋上の場所ともなり楽しんできた。
相撲は、大変シンプルな勝負を争う競技である。短時間の勝負に数々の深い精神性があり、力士の集中力と胆力に驚かされる。そのようななか幕内の佐田の海関(熊本)が、剣道教士八段岡田先生(尚道館館長)に教えを乞うドキュメントをみた。学ぶのは相手との呼吸。蹲踞から立ち上がる呼吸である。
剣道は、双方礼から既に気持ちを入れる。蹲踞から立ち上がりでは丹田に気を充満させ、相手へ無形の圧力をかける。決して高ぶらず丹田にすべてを収めることが大切になってくる。静である。打ち込むときは丹田から出る力が動となる。呼吸が全てだ。
相撲の取組までの動作は、儀式ではなく呼吸のためと聞く。相手と合気となったときに立ち上がるのである。佐田の海関は、岡田先生の教え通り仕切りまで呼吸を意識し、立ち上がりで気を相手にあてていた。場所は4勝11敗であったが、幕内玉鷲関に続く年齢にもかかわらず佐田の海関の力だけではない武道を見ることができた。
番組中、帰宅した関取に「パパ負けちゃったの。どうして~?」とかわいいお子さんから聞かれ困る姿に心を重ねたが、取組む姿勢を理解できるのは間近である。がんばれパパ佐田の海関!